営業やセールスに関わる人の間で今注目を集めているのが「セールスイネーブルメント」です。セールスイネーブルメントとは、成果につながる営業人材育成のことを指します。セールスイネーブルメントを取り入れ推進すると、営業組織の強化につながります。
セールスイネーブルメントは、オンラインでのマーケティングとデジタルツールの急速な発展、サブスクモデルの普及などにより、注目を浴びるようになりました。
この記事では、営業部門にとってセールスイネーブルメントが必要な理由とセールスイネーブルメントを効果的かつ効率的にする10のツールを厳選して紹介します。
1.セールスイネーブルメントが営業活動において必要な理由
営業の属人化による、売上低下を防ぐ
セールスイネーブルメントとは、成果を出す営業担当者を輩出し続ける人材育成の仕組みのことです。営業成果の最適化を促進し、複雑かつ細分化した顧客のニーズを明確にできるため、営業活動の属人化を防ぎます。
従来、営業職は属人化しやすい職種でした。顧客データは営業担当者が個別に管理しているうえ、トップセールスがどのような行動をしているのか、営業部門全体で共有するのが難しかったからです。
セールスイネーブルメントでは、ITツールの導入が必須です。ITツール上に蓄積したデータを分析し、営業人材育成に活かすからです。教育担当者のスキルによって教育レベルにバラツキが生じがちなOJTとは異なり、教育や営業スキルなどさまざまな面で、属人化から脱却できます。これにより、営業担当者のスキルアップとスキルの均衡が図れ、売上低下を防げます。
営業活動の強化
セールスイネーブルメントでは、営業活動から得た多くの情報をデータ化して検証し、営業活動の強化を図ります。教育や研修が営業成果にどのくらい繋がっているか、トップセールスがどのような営業活動を行っているのかを明確にすることが可能になります。こうしたデータを営業部内で共有して活かすことが、営業活動の強化に役立ちます。
WEBマーケティングやMAの普及による変化
営業活動において、セールスイネーブルメントが必要になった背景の1つに、MA(マーケティングオートメーション)やWebマーケティングの普及があります。マーケティング部門から営業部門に質の高いリードが数多く供給されるようになり、営業が効率的に対応できる体制が必要になったためです。
競合に勝つためには、今後、マーケティングと営業が一気通貫で動いていくことが重要になってきます。マーケティング部門が獲得したリードを売上につなげるには、営業の手腕にかかっています。営業活動の効率化と強化のためにも、セールスイネーブルメントは必要であると言えます。
2.セールスイネーブルメントツールとは
SFA・CRM
セールスイネーブルメントでは、売上額、受注率、案件数などはもちろん、顧客情報や商談の履歴とその内容、営業スタッフに対する教育の履歴と内容など、営業に関するさまざまな情報をデータとして蓄積していきます。その際、SFA(営業支援ツール)やCRM(顧客管理ツール)を活用すると、効率的にデータの蓄積が可能です。
セールスデジタルコンテンツ管理(DCMS)
セールスデジタルコンテンツ管理(DCMS)は、セールスコンテンツのDB化やコンテンツの共同作業環境、プレゼン用のインタフェース機能、コンテンツのバージョン管理などの機能を持つツールのことです。
営業資料など、営業担当者が日々活用しているセールコンテンツは多岐に渡ります。そうしたコンテンツをまとめて管理し、営業担当者全員が活用できるようにするのがDCMSです。DCMSの市場は米国で急速に成長をしており、日本でも少しずつ広がってきています。
インサイドセールスシステム
インサイドセールスとは、リードに対して、メールや電話、Web会議ツールなどを活用し、非対面で行う営業手法で、インサイドセールスの過程で使用するツールのことをインサイドセールスシステムと呼びます。
オンラインで商談を進めるため、営業にかかる工数を大幅に削減することができます。インサイドセールスシステムの活用によって浮いた時間を他の商談に活用すれば、1日あたりの商談回数を増やせます。
ウェビナーツール
ウェビナーとはWebとセミナーを組み合わせた造語で、オンラインで行うセミナーのことです。ウェビナーツールは、オンライン上でセミナーを開催したり、セミナーに参加したりできるツールを指します。商品デモをはじめとした商品説明や販促のためのセミナーを、オンラインで開催できるため、忙しかったり、遠方だったりでセミナーに足を運べないリードも参加できるため、商圏を広げることが可能です。ウェビナーをリード獲得やクロージングに活用する企業も少なくありません。
また、営業担当者に向けた社内教育にウェビナーを活用している企業もあります。拠点が複数拠点あると、研修のためにあちこちから集まらねばならず、移動時間や交通費などのコストが発生します。そうしたコストの削減につながるのが、ウェビナーのメリットです。
3.セールスイネーブルメントツール厳選10選
ジャンルが様々なセールスイネーブルメントツールは種類が多く、導入に向けてどれを選ぶべきか、悩むことも少なくありません。この項目では、セールスイネーブルメントツールのおすすめ10選を紹介します。
①Smartsheet
Smartsheetは、Excelから派生したタスク管理ツールです。タスク管理のほか、レポート機能、プロジェクトの進捗状況やカレンダーの管理、ドキュメント共有、作業の自動化などの管理機能が備わります。
タスク管理に使用するシートはGoogleのスプレッドシートやMicrosoftのExcelを元にした構造になっており、そこに必要な機能を追加した作りになっています。ガントチャートやカレンダーの自動生成が可能です。リマインダーを出したり、Trello的な使い方も可能です。
②Copper
③Sales Doc
Sales Docは、営業資料を活用するためのツールです。Sales Docから顧客に資料や動画を送信すると、顧客の閲覧時にアポイントを打診するポップアップが自動表示されるため、商談機会を得やすいです。
また、送付した資料を顧客がどのくらいの時間をかけて閲覧したのか、資料の中で注目した箇所が数値でわかるためアプローチ戦略が立てやすいうえ、成果が上がりやすい資料への改善にも役立ちます。
④Seismic
Seismicは、営業部門とマーケティング部門の橋渡しに役立つ機能が搭載されているセールスイネーブルメントツールです。
営業部門は自分たちが今取り組んでいる案件にパーソナライズされたコンテンツのライブラリを利用でき、契約締結に必要な資料や重要なニュースなどに、適切なタイミングでアクセスできます。マーケティング部門は、コンテンツのコラボレーションや自動化、管理、ハイフをSeismic上で行うことができます。
⑤Bigtincan Hub
Bigtincan Hub(ビッグティンカン ハブ)は、アジアをはじめ、北米、ヨーロッパ、オセアニアと世界中で利用されているSFAです。iPadやタブレットを使った見せるコンテンツを配信するためのプラットフォームです。営業先や現場から見たい資料にいつでもアクセスできます。マルチデバイスに対応しどのデバイスからも同じ資料にアクセスできるうえ、セキュリティ対策も万全です。
コンテンツIQと呼ばれるAIが格納されたすべてのコンテンツの利用度を自動解析し、誰がいつどのコンテンツをどのくらい見ていたのか分析できるため、利用度や閲覧度の高いコンテンツがすぐにわかります。
⑥PITCHER
⑦Handbook
Handbookは、モバイルコンテンツ管理システムです。クラウド上でコンテンツ作成ができるうえ、分析機能が豊富に搭載されています。例えば、商談時に活用した販促コンテンツの利用実態データを取得し、成果の高い営業担当者のノウハウを把握する、ということもできます。
管理と共有を徹底できるため、複数人の管理者を置くことはもちろん、部署の垣根を越えて組織全体で管理することも可能です。
⑧LeadGenius
⑨Senses
⑩pipedrive
4.セールスイネーブルメントツールの導入ポイント
取扱いサービスや自社商品との関係・相性
セールスイネーブルメントツールはどれも業種を問わず利用できますが、業種や商材との相性があります。とはいえ、業界独特の進め方や業種に特化した営業活動もあるため、自社商品やサービスの営業スタイルに合っているか、確認してから導入すべきです。
Webサイトに掲載されている導入事例に同業種の事例があるかチェックするといいでしょう。問い合わせの際に、同業種の導入事例の有無について質問するのもおすすめです。
営業特化型と包括型のどちらか
セールスイネーブルメントツールの際には、目的を決め、営業特化型または包括型のいずれかを選びます。セールスイネーブルメントツールは主に営業活動を組織的に強化するためのツールとして使用されますが、中には、マーケティングや研修に対応できるツールもあるからです。目的として、次のような項目が挙げられます。
・営業担当者の作業軽減
・営業活動の把握
・営業活動の改善への期待
現時点での営業部門の強みと弱みを洗い出し、セールスイネーブルメントに対する自社の目的に合ったものを見つけることが重要です。
導入コスト
セールスイネーブルメントツールの導入と運用には、金銭的なコストのほか、学習コストがかかります。
すでにSFAやCRM、MAなどのITツールを導入済みの場合、乗り換えるか、既存のものを使い続けるかでコストが変わります。新たに導入する場合や乗り換えるバイアには、従業員がツールを使いこなせるようになるまでの教育や作業にかかるコストも含めて検討すべきです。とはいえ、導入当初にはさまざまなコストがかかったとしても、その後、工数の削減や営業による成果の向上などによってコスト削減に繋がる可能性もあります。