インサイドセールスは数多くの見込み客の中から、受注確度の高い顧客を選定し、リードを対面営業に引き継いで成約率を高める営業活動です。一連の活動においてLinkedInが有効であることはあまり知られていません。
ビジネスインフラとして構築されたLinkedInは、世界中のビジネスマンとコミュニケーションがとれるツールです。採用目的で使われることが多いものの、リード獲得ツールとしても十分機能します。
インサイドセールスにおいてLinkedInが有効な理由、成果を出す考え方や手順を解説します。
1.インサイドセールスでLinkedInが効果的な理由
従来、営業担当者は商談機会の獲得からクロージング、顧客のフォロー、アップセルの提案まですべて一貫して行っていました。しかし、業務が属人化しやすいことや業務負荷が高いことから、見直されるようになりました。
営業プロセスが可視化、分業化される中で誕生したのがインサイドセールスです。見込み客の獲得、商談設定までを担います。
インサイドセールスが成果を出すポイントは、自社のサービスと相性の良い顧客を見つけ、適切にアプローチして面談機会を得ることです。顧客開拓の手法として、LinkedInが活躍するのです。
ビジネスに特化したLinkedIn
LinkedInは200の国と地域、8億5,000万を超えるユーザーが使っているツールです。日本では2022年8月に300万ユーザーを突破しました。
LinkedInと他のソーシャルメディアの一番の違いは、ビジネスインフラとして機能している点です。
LinkedInのユーザーはビジネスのアイデアの獲得や人脈の開拓、競合他社の動向、課題解決に向けた情報を必要とする人ばかりです。転職機会を得る目的で使っている人もいますが、どちらかというとビジネスの総合的なプラットフォームとして機能しています。
そのため、価値があると判断した情報やユーザーは基本的には歓迎されます。Facebookは経営者が多く使っているとはいえ、仕事とプライベートを切り分ける人が少なくありません。DMを送っても商談へと結びつく可能性は低いでしょう。
LinkedInはInMailという機能を使うと多くのユーザーにDMを送ることができますが、その反応率は10%とも言われています。反応率の高さは、LinkedInのユーザーが価値の高い情報を求めていることの証左となるでしょう。
インサイドセールスの成功を左右する、リード開拓を行いやすい土壌が整っているのがLinkedInなのです。
従来のリード獲得手法に限界が生じた
かつてリードの獲得はテレアポ一辺倒でしたが、近年は様々な手法が開拓されました。Webページからの資料請求、Web広告、セミナーの開催、手紙営業などです。
セミナーの開催や手紙営業など、一部効果の高いものもありますが、費用対効果が合わないこと、競合が同様の手法を取り入れることで成果が得づらくなっています。
LinkedInは採用目的で利用しているケースが多く、日本においてはリード獲得手法としてはあまり活用されていません。高い効果が期待できます。
意思決定者が複数人に増えた
企業の意思決定プロセスも変化しています。かつては企業オーナーなどのキーマンが独断で意思決定を行うことが少なくありませんでしたが、今はガバナンスを意識して各部署の責任者が集まって決定を下すようになりました。
営業部だけでなく、経営企画部やマーケティング部、法務部などです。その場合、リードを獲得するためには様々な部署や人にアプローチしなければなりません。
LinkedInは企業に所属する人を一覧で見ることができ、部署やポジションの把握ができます。必要な人にアプローチし、円滑にコミュニケーションをとりつつ商談を進めることができます。
中小企業も世界進出を目指す時代に
LinkedInは先進国から新興国まで、様々な国と地域で活用されています。特にインドや中国、インドネシアのユーザー数が急増しており、今後の経済発展が望める地域へのアプローチに最適です。
少子高齢化が進行する日本では、市場の縮小が深刻な問題となっています。例えば化粧品の市場規模は2021年に2年連続で大幅に減少しています。これは新型コロナウイルス感染拡大でインバウンド需要が消失したためです。
化粧品の市場は2012年から底打ち反転して増加しましたが、市場を押し上げていたのは外国人観光客であったことが改めて露呈しました。
かつて海外進出はリスクと捉えられていましたが、今は国内に留まることの方がリスクが高いと見られる時代になっています。
2.LinkedInを活用したインサイドセールスの基本的な考え方
まずはインサイドセールスの種類について説明させていただきます。アウトバウンドとインバウンドです。
アウトバウンドはユーザーに対して積極的にアプローチをかけることです。具体的には広告やメール(InMail)が該当します。インバウンドは投稿を軸としてフォロワーを集めることです。
アウトバウンドとインバウンドについて詳しく解説します。
アウトバウンド
アウトバウンドは費用が発生する代わりに、即効性のある成果に期待できます。アウトバウンドは、面談獲得数やリード獲得数など、営業成果に直結するKPIを設定するケースが多く見られます。
<h4>広告</h4>
LinkedInの広告は、ビジネス上の多種多様なセグメントを行えるという特徴があります。年齢や性別などの基本的な属性以外に、以下のような分類が可能です。
・会社カテゴリー:企業ランキングなどの各カテゴリー
・会社の成長率:前年と比較した会社の成長率
・会社規模:従業員数をベースとした企業規模
・経験年数:実務経験の合計年数
・メンバーの関心:テクノロジー、ビジネスなど関心のあるカテゴリー
広告で成果を出すポイントは、属性に応じて顧客を分類し、広告の内容に変化をつけることです。顧客がどこに課題を持っているか、何に興味関心があるのかを基に仮説を構築し、それに合致する広告を出してください。
どのユーザーにも同じ広告を出すと、効果を高めることができないうえ、十分な仮説検証ができません。
メール
LinkedInはユーザーが階層分けされています。無料プランでメッセージのやり取りができるのは、1次コンタクトと呼ばれるユーザーのみです。
各階層は以下のようになっています。
1次コンタクト | 相手からのリクエストを承認したり、自分から送ったリクエストが承認されることによって、直接繋がったユーザー。検索結果やプロフィールの名前の横に「1次」のアイコンが付いています。これらのユーザーとは、LinkedIn 上でメッセージを送って直接連絡を取ることができます。 |
2次コンタクト | 1次コンタクトと繋がりがあるユーザーです。検索結果やプロフィールの名前の横に「2次」のアイコンが付いています。プロフィールページの 【繋がりを申請】 ボタンをクリックすると、繋がりリクエストを送信できます。 |
3次コンタクト | 2次コンタクトと繋がりがあるユーザーです。検索結果やプロフィールの名前の横に「3次」のアイコンが付いています。 |
LinkedInのInMailは、1次コンタクト以外のユーザーにDMを送付することができます。リードに相応しいユーザーを抽出し、メッセージを送ります。リード獲得で反応率が10%程度ということも多く、効率的な営業活動を行えます。
InMailも広告と同様に、判で押したようなメッセージを大量に送るのではなく、属性や興味関心のある分野を見分けて変化をつけてください。
特にキーパーソンにおいては、毎日大量のメールを処理しています。価値がないと判断されると、見向きもされません。どのような価値が提供できるのかを、相手に伝えられるかどうかが重要です。
インバウンド
インバウンドはフォロワーを獲得し、メッセージのやり取りを通して面談や商談を獲得します。時間がかかりますが、費用は発生しません。インバウンドはサービスや会社のブランド構築や認知度の拡大、カスタマーサポートに役立てられます。
投稿
ユーザーから共感を得る投稿を行うことでフォロー、フォロワー関係が成立し、ユーザーからの支持や信頼を得ることができます。
LinkedInはビジネスインフラのため、サービスや商材に関する投稿は歓迎されます。しかし、セールストークだけでは効果は限定的です。ビジネスのヒントとなる投稿を行うことで、影響力が拡大します。
特に歓迎されるのは、言葉にできない現象を言語化すること。起こっている問題点の共通項を洗い出し、抽象化して明確な言葉にすると支持が得られます。
例えば、以下のような共通認識があったとします。起業家と投資家を繋ぐプラットフォームを運営している会社の従業員はどのような投稿をすべきでしょうか。
事象A:アメリカの金利引き上げの煽りを受けてIPO市況が悪化した
事象B:国内外でダウンラウンドIPOが続出している
事象C:日本ではスタートアップに資金を出したがらないベンチャーキャピタルが増えた
「国内のスタートアップ経営者は、資金調達バブルが単なる金融緩和によるものだったと気づくべきだ。noteやtoridoriの相次ぐダウンラウンドIPOがその証拠。起業家には、エンジェル投資家からの小口資金を調達しつつ、日本政策金融公庫などからのデットを活用した方が、バリュエーションは遥かに下がりづらいことを知ってほしい。」
現在、起こっていることを盛り込んだうえで、スタートアップのバリュエーションを下げない資金調達方法を紹介しています。このように、世の中で起こっている事象と、課題を解決する方法、サービスの紹介へと繋げられる投稿が良いでしょう。
投稿を継続すると、少しずつフォロワーが獲得できます。フォロワーと情報交換をし、メッセージのやり取りを続けることで商談へと繋げられるでしょう。
3.LinkedInでインサイドセールスを行う手順
インサイドセールスは以下のステップに従って進めます。
・アカウントを作成する
・プロフィールを作りこむ
・情報を収集する
・業界・ターゲットを絞り込む
・投稿する
・メッセージを送信する
・広告を出稿する
始め方は難しくありません。インサイドセールスを実施する目的が決まり、進め方が決まったらこの手順で進めてください。
アカウントを作成する
LinkedInの登録ページを訪れ、名前とメールアドレス、パスワードを入力します。登録する際は、必ず本名を入力してください。仮名、架空の会社名を使用することは、規約に違反します。
LinkedInに登録し、画面に表示される手順に従って入力するとアカウントは作成できます。
プロフィールを作りこむ
必ずプロフィールを作りこんでください。プロフィールは全角220字まで入ります。会社名、肩書はもちろん、実績、活動内容、興味関心のある分野を入れると良いでしょう。
LinkedInには海外の人が多く集まっているため、プロフィールは英語で書いた方が効果的という誤解をする人がいます。プロフィールは複数の言語で作成できるため、日本語、英語などと書き分けて作ってください。
情報を収集する
実は情報収集プロセスが成果創出に極めて重要です。LinkedInを情報収集目的で使う営業担当者も少なくありません。
顧客と目線を合わせて話をするためには、業界の知識が必要不可欠。投資銀行やコンサルティング会社の従業員は、特定の業界知識を豊富に持っていることで知られています。一般紙や業界紙で得るものもありますが、多くをSNSで得ていることが知られています。
LinkedInは第一線の現場で働く人の声や、メディアに流れる前の情報が多く流通しています。その情報は、顧客へのアイスブレイクや提案に役立つでしょう。
インサイドセールスの担当者が豊富に情報を集め、次の担当者へと引き継ぐことで、提案の質が向上し、受注の獲得へと繋がります。情報収集はインサイドセールスの段階で十分に取得することをおすすめします。
業界・ターゲットを絞り込む
情報収集をしたら、アプローチする業界やターゲットをある程度絞り込みましょう。業界で分類することにより、向き不向きが分かります。面談に進みづらい理由が業界特性によるものということは頻繁にあります。
手あたり次第に声をかけるのではなく、戦略的に進めてください。
投稿する
インサイドセールスの営業活動は、広告やInMailによるものがメインとなりがちですが、それに合わせて投稿を行うことも重要です。
何らかのアクションを起こす人は、対象者のプロフィールを確認し、投稿内容に目を通します。投稿内容が興味関心のある分野と合致していると、信頼度が増して成果に繋がるためです。
メッセージを送信する
効率的にメッセージを送るのであれば、InMailを使ってください。LinkedInには様々なプランが用意されています。例えば、「Sales Navigator Core」で利用すると高度な検索が行えるため、ターゲットを絞り込みやすくなります。利用料金は月額79.99ドルです。
LinkedInは利便性が高い一方、無料プランだと利用範囲は限定的です。定期的に費用対効果を見極めてください。
広告を出稿する
広告を出稿するには、法人ページを作成してください。Facebookのビジネスページによく似たものです。
LinkedInの広告は、タイムライン内や上部、右サイドバー、メッセージボックス内など、様々な場所に表示ができます。
これらは広告を出稿する目的に応じて使い分けます。認知を拡大したいのであればインプレッション数の最大化、キャンペーンへの参加を促進するのであればWebサイトへのトラフィック重視などです。目的を明確にすることが何よりも重要です。
配信する属性を決め、広告を出稿してください。
4.LinkedInのインサイドセールスで有効な小技
広告、InMail、投稿がインサイドセールスでは効果的ですが、成果を出すにはプラスワンの小技があります。
テレアポとの組み合わせで効果倍増
新規営業で活用されるテレアポですが、受け付け段階で断られるケースがほとんどでしょう。特に大手企業は、このハードルを突破することが難しいことで知られています。
LinkedInで管理職や役員の名前、部署、職位を抑えられます。電話の難易度を下げることが可能です。InMailでメッセージを送り、その後電話をかければ、相手への有効なアプローチになります。
オープングループに参加して情報を集める
LinkedInは同じ業種や関心ごとに人が集まり、アイデアの交換、人脈の構築に役立てるグループ機能があります。グループは誰でも作成することができます。
グループには独自の参加基準が設けられ、管理者が参加・不参加の調整を行います。グループに参加して積極的にコミュニケーションを図るのも、人脈を構築して情報を収集する一つの手段です。
費用対効果を見極めて有料版にアップグレード
インサイドセールスで有効なプランは「Premium Business」か「Sales Navigator Core」でしょう。「Premium Business」が47.99ドル、「Sales Navigator Core」が79.99ドルです。
円換算で月額5,000円以上の料金が発生するため、費用対効果の検証が必要です。ただし、インサイドセールスのカギとなるInMailは有料プランに加入しなければ、利用できません。
5.インサイドセールスにLinkedInを活用しよう
LinkedInのインサイドセールスは、テレアポや手紙、セミナーによるリード獲得よりも、効率的に高い効果が期待できます。
LinkedInの効果を周囲に説明し、プロジェクト化しなければ成果は出ません。基本の機能や特性を理解して、有効な使い方を構築しましょう。
ただし、LinkedInは万能ツールではありません。特に日本の利用者が少ないというのは最大のデメリットです。
Merが提供するLeadPoolは、500万社以上の企業データと200万人以上の決裁者をはじめとしたキーパーソンのSNS情報を保有しています。顧客リスト作成、顧客の詳細情報の調や顧客リストの作成、顧客管理ツール(CRM)や営業支援ツール(SFA)へのデータ入力など、インサイドセールスが活動する上で必須の業務の効率化を実行します。
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