顧客あたりの単価アップを考えたとき、LTV(顧客生涯単価)を向上させる手段としてアップセルとクロスセルは非常に有効な施策です。それぞれの意味と違いを知り、施策のやり方を見直すことで、売上目標の達成に大きく近づけます。
この記事では、クロスセルとアップセルの違いと成功させるポイントについて解説します。実際の成功事例も紹介しますので、より理解しやすいはずです。
1.アップセルとクロスセル意味と違いとは
アップセルは、同じアイテムの上位モデルへ移行したりオプションを追加購入したりすることを指し、クロスセルは提供しているアイテムとは別のアイテムやサービスを購入することを指します。 アップセルは「同一製品に関するもの」、クロスセルは「提供製品とは別の製品ラインナップ」と考えるとわかりやすいです。
アップセルとクロスセルについて、以下の項目でさらに説明します。
アップセルとは
アップセルとは、顧客が実際に購入しようとしているものよりも上位の商材を提案し、購入につなげることを意味します。下位モデルのPCを購入しようとしていた顧客に最上位モデルを紹介し、そちらを選んでもらうようなケースが該当します。
アップセルの目的は、顧客ひとりあたりの購入単価を上げることです。これまでの営業業務では、顧客単価の向上を目指すのは当たり前のように考えられてきましたが、SaaS型ビジネスの台頭により、LTV(顧客生涯価値)の考え方が浸透してきた今、売上を伸ばす手段として再注目されています。
クロスセルとは
クロスセルとは、顧客が購入しようとするアイテムに関連する別アイテムを提案し、一緒に購入してもらうことを意味します。大型テレビを購入する顧客にレコーダーやスピーカー、テレビ台などを提案し、一緒に購入してもらうようなケースがクロスセルに該当します。提案する別商材は、メインの商材の補助的なものや、関連したニーズに応えるものである場合もあります。
クロスセルは、アップセルと同じく、顧客一人あたりの購入単価を上げることを目的としています。
アップセルとクロスセルの違い
アップセルもクロスセルも、顧客一人あたりの購入単価を上げることを目的としています。両者の違いは、顧客単価を上げる方法です。
アップセルは上位のプランや商材の購買によって顧客単価を上げるのに対し、クロスセルは関連商材の追加購入によって顧客単価を上げます。
アップセルとクロスセルの最終的な目的は同じですが、達成までのアプローチが異なります。
2.アップセル・クロスセルを提案するタイミング
アップセルを提案するタイミング
アップセルは、顧客が購入を決断する直前に提案すると効果的であると考えられています。購入意思がすでに固まっている場合、その商材に対してすでに高い興味を持っているため、「せっかく買うならこちらのほうがお得かもしれない」と提案を受け入れやすいからです。
クロスセルを提案するタイミング
クロスセルは、製品やサービスの購入や継続を決断した直後、または、定期的に訪問するタイミングで提案するといいでしょう。
これまで使っていた商品やサービスを購入したり継続したりする場合、今より便利になったり、より快適に利用できたりするならば、追加購入を考えるきっかけになるからです。
3.アップセル・クロスセルを成功させるポイント
顧客情報の収集と蓄積
顧客に最適なアップセル・クロスセルを実施するには、顧客の購買履歴や問い合わせ履歴など、これまで蓄積してきた顧客情報を元にニーズを分析し、どのような商品を紹介すべきか判断することが重要です。
顧客情報を営業部門はもちろん関連部署とも共有すれば、担当者が不在でも、ほかの従業員が対応できます。情報を共有できていれば顧客に好印象を与え、よりよい関係を構築できるでしょう。これにより顧客満足度やLTV(顧客生涯価値)が高まれば、継続的な利益の工場につながります。
こうした顧客情報の管理と分析には、CRMと呼ばれる顧客管理ツールや、SFAと呼ばれる営業支援システム)といったITツールを活用するのがおすすめです。
顧客のニーズや温度感に適した提案
クロスセルやアップセルを成功させるコツは、顧客が買う気でいるタイミングを見逃さないことです。財布のひもが緩んでいる時を狙って畳みかけるように、アップセルやクロスセルを提案します。
顧客のニーズや温度感と、営業担当者の提案のタイミングがバッチリなら、仮に予算オーバーしていたとしても、すんなり購入してくれる可能性が高いです。「こちらのほうが便利ですよ」のひと言でワンランク上の商材を選びアップセルに繋ります。また、5,000円以上の購入で送料が無料になるなら5,000円になるように何かを買おう、2つ購入すると10%オフになるならもう1つ買おうという気持ちになり、クロスセルに繋がります。
4.アップセル・クロスセルをする際の注意点
顧客のことを第一に考えない提案
提案時にアップセルやクロスセルを考えている場合、営業担当者は、顧客からの信頼を得られるように努めなければなりません。そのためには、提案・実施・検証のすべてのプロセスにおいて、顧客の視点でどうすべきか考えることが重要です。
大幅に値引きをしているセット商品を提供しても、顧客にとって魅力やメリットが感じられなければ、顧客満足度は著しく低下します。また、アップセルやクロスセルすることに必死になり、過度な営業をすることによって、押し売りされていると感じさせれば、同様に顧客満足度は低下するでしょう。最悪の場合、顧客が離れていってしまうことになりかねません。
アップセルやクロスセルを目指す場合には、まず、顧客の信頼を得ることを第一に行動すべきです。
5.アップセル・クロスセルに成功した企業事例
アップセル事例①
ECサイト大手のAmazon.comで商品を選ぶ時、「この商品を買った人はこんな商品も買ってます」という表示が出ているのを見たことがある人は少なくないはずです。これが「レコメンド機能」と呼ばれるものです。
Amazonで欲しい商品を見ている時、レコメンド機能によって今見ている商品よりも高価格の商品がいくつも表示されます。どういう商品なのか気になりその商品を見に行くと、検討しているものよりも高スペックで良いものです。検討し最終的に高価格のほうを購入した、というような経験をしたことはありませんか?これも立派なアップセルです。
このように、レコメンド機能があるECサイトならアップセルが可能です。
アップセル事例②
プロ野球球団・東京ヤクルトスワローズの運営団体である株式会社ヤクルト球団では、アップセル戦略を活用しています。
東京ヤクルトスワローズのファンクラブには、ライト会員からプラチナ会員まで5つのグレードが存在し、グレードによってもらえる入会記念品が異なります。顧客調査を行った結果、入会記念ユニフォームの人気が高く、顧客ロイヤリティの向上につながっていることが判明しています。
この結果を元に、最上位グレードであるプラチナ会員と次のグレードであるゴールド会員の入会記念品にユニフォーム特典などを充実させるとともに、各グレードの入会特典を差別化し、最上位グレードであるプラチナ会員の数が急増し、売上増加を達成しました。
クロスセル事例①
大手ハンバーガーチェーン店のカウンターでハンバーガーとドリンクを注文すると、店員はポテトがつくセットを勧めてきます。これこそがクロスセルです。
単品2つよりもポテトがつくセットは顧客にはお得だと思えますが、企業には売上額増加となります。ちなみに、Mサイズのセットを注文した顧客にLサイズのセットを勧め、そちらを購入してもらうのはアップセルです。
クロスセル事例②
複数商品の同時購入を促すのは、商品をまとめて陳列できる実店舗で特に有効な方法です。たとえば、スーパーマーケットの精肉や鮮魚売り場では、鍋料理用のスープなどの調味料や鍋を作るのに必要な野菜などを同じ場所に陳列しています。
料理の魅力を伝えるPOPを用意するなど、同時購入をストレートに働きかけず、顧客が自ら食材をそろえたくなるようアピールをすることが、この場合のクロスセルのポイントです。
6.アップセル・クロスセルを成功させるには顧客のニーズを温度感を的確に把握すること
アップセルもクロスセルも、顧客あたりの単価を上げ、結果的に企業の売上増を目指す施策です。いずれも、顧客の視点でニーズを捉え、顧客の温度感が上がったタイミングで提案することが重要です。
顧客に最適なアップセル・クロスセルを実施するには、購買履歴や問い合わせ履歴など過去の顧客情報を元に分析し、どのような商品を紹介すべきか判断します。顧客情報の管理には、CRM(顧客管理ツール)を使うのがおすすめです。顧客の住所や担当者などの基本情報はもちろん、購入履歴や問い合わせ履歴などを一元管理できます。
Merが提供するpipedriveは、エストニア発のCRM(顧客管理ツール)です。リードや案件の管理、顧客とのやりとりの追跡、タスクの自動化、分析とレポート機能など、営業活動を支援するための機能を数多く搭載しています。
商談の進み具合や商談結果を可視化でき、データを整理して管理しやすいため、失注の削減につながります。クロスセルやアップセルのタイミングを見極めるのに最適です。
pipedriveには4つのプランがあります。どのプランも初期費用0円、年間払いの場合、月額1,500〜6,000円/1ユーザーで利用できます。14日間のフリートライアル期間を設けており、使いやすさを確認してから導入できます。